novelist-kentoの小説活動

仕事のかたわら、主に社会派SFの長編や日常ものの短編小説を書いているアラフォーの男です(^_^) このブログでは、自身の書いた小説だけでなく印象的だった作品のご紹介と、読者様、または実際に執筆をされておられる方が楽しめる・タメになる記事を発信できたらと思っています_(._.)_

皆さんへのお詫びと出版の反響について

 ご無沙汰しておりました。

 いつも記事を楽しみにして頂いている方へ、諸事情により更新期間が空いたことをお詫び申します。これまで読者登録や投稿してきた記事にいいねをして頂いた方だけでなく、私の本まで購入して下さった方まで全ての皆さんに感謝しております。

 

 私の初めての小説『碧き聖断』を2019年7月5日にアメージング出版より出版しましたが、レビューを通じて又は実際にお会いして、私自身新たな発見があり今後の励みになるような感想を数多く頂きました。Amazonのレビューでは、「太平洋戦争や原爆の捉え方について新たな発見があった」、「当時の登場人物たちの想いがリアルに描いてあった」、「清々しい主人公が印象に残った」などの感想を頂きました。読み終えた知り合いの方々にも直接お会いして、「面白かったよ」とストレートな言葉をかけて頂き素直に嬉しかったです。

 

 この作品を書いたきっかけは、私が日本でも特に平和教育に力を入れている被爆都市である広島市に生まれ育ったことがバックグラウンドにありますが、実のところ、社会に揉まれて挫折を経験した20代中盤の「私」であり、そこからまた夢を抱いて立ち上がろうとした「私」なので、とても思い入れのある作品になっております。

 

 現在34歳の私やそれより若い世代の方たちのように、もちろんあの戦争を経験したことがなく、歴史の授業で太平洋戦争について主な出来事や流れなど大まかにしか教わらなかった方にとっては敷居が高く感じられるかもしれませんが、難しい専門用語や言い回しについては注釈を巻末にまとめて載せるなど工夫をしています。
 長さとしては長編に近い中編といったところでしょうか、2~3時間程度で読み終えられる長さかと思います。

 

 戦争について関心が強い方、薄い方を問わず、現在やる気に満ちて日々過ごしておられる方、何となく今の生活に物足りなさを感じられている方にとっても、刺激になる読書体験になるかと思います。少しでも興味を持って頂いた方にはぜひ手に取って頂けたらと思います。


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いよいよ出版します。

ご無沙汰しておりました。

 

前回の記事「出版の準備が整ってまいりました」(2019-05-19)でお知らせした小説が

7月5日に発売となりました。

 

タイトル:碧き聖断
著者名:宮田賢人
定価:1490円
単行本サイズ194ページ
形式:POD(プリント・オン・デマンド)

 
現代の大学生の誠太が原爆投下を阻止して未来を変えるために太平洋戦争末期にタイムスリップする小説です。
時代考証は父の助言を取り入れながら行いました。
 
Amazonでの「内容紹介」は次の通りです。
■内容紹介■
大学生の誠太は、国連の秘密機関から、原爆が投下される前に戦争を終わらせるという使命を受けて、80年前にタイムスリップする。
そこは、太平洋戦争末期の東京。誠太は、このまま戦争を続ければ日本がどうなるかを協力者である海軍大臣の米内に伝えれば、すぐにでも戦争は終わると思っていた。しかし、協力者の米内でさえ、現代を生きる誠太とは価値観が全く異なっていた。軍の多くの指導者や将校は、本土決戦を叫んでいた。誠太の前には、思いもよらない多くの壁が立ちはだかっていたのだ。
また、誠太自身の心も揺れ動く。食糧も物資も乏しい生活の中でひたむきに生きる人々の姿を目にし、背負った使命と、日本人、人としての想いの狭間で苦しむことになる。
様々な想いが交錯し、戦争終結の展望が開けない中、戦況は史実通り悪化してゆく。大規模な本土空襲の恐怖も忍び寄ってくる。果たして誠太は使命を果たせるのか? 日本の運命は、世界の未来は――。
80年前の東京やそこに生きる人々の描写はリアルで、当時の緊迫感が伝わってくる。読者自身がタイムスリップしたかのような感覚にとらわれることだろう。
戦争の愚かさや平和の尊さだけでなく、現代を生きる私達にも通じる、人と人との絆、広い視野の大切さについても考えさせられる物語。
 
こちらがAmazonの予約販売ページです↓
 

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出版の準備が整ってまいりました

ご無沙汰しておりました。

今日から約一ヵ月前に某出版社にチェック・修正して頂いて返却してもらった原稿を念入りにチェック・修正して今週末に先方に提出しました。先方に色々なアドバイスを頂きながら、こちらとしても「もうやるだけのことはやった」という原稿に仕上がったと思います。
同時並行で、表紙のデザインも先方と意見交換を行いながら進めてきて、ようやく完成形が見えてきました。

小説の内容については、前回の記事「80年前の東京に向かった理由」をご覧ください。
販売開始し次第、案内ページを作成いたしますので、 少しでも興味を持って頂いた方にはぜひ手に取って頂きたいです。

タイトル:碧き聖断
著者名:宮田賢人
定価:1400円(予定)
単行本サイズ200ページ程度
形式:POD(プリント・オン・デマンド)

令和明けの5月4日に、毎年3日かけて行われる広島フラワーフェスティバルに行って参りました。その時に撮った原爆ドームを、今作品と深く関わっているため載させて頂きます。

では、またお会いしましょう。

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80年前の東京に向かった理由

 今回の記事で、今作のあらすじや作品への想いを述べます。
 今作の主人公は大学生の二十歳の男の子です。国連の秘密機関の命を受けて、2025年の世界から80年前の1944年8月の東京にタイムスリップします。そこで、一番の協力者である海軍大臣の米内光政と共に、戦争の早期終結に向けて奮闘する話しです。
 そう、ここで早期終結とは、史実で原爆が投下される1945年8月6日までに戦争を終わらせるということです。なぜそれまでに戦争を早く終わらせる必要があるのか? については、前々回の記事『水の都で起きた悲しいできごと』で書きましたように、私は広島市民であり、原爆の惨状を知っていてショックを受けました。それ故、原爆で亡くなった人の苦しみや命を救えるなら救いたいと思ったこともあります。でも、過去に起きた事実は変えることはできません。でも、フィクションの世界ならそれができるのではないか。そう思ったきっかけは、2012年の夏に観たNHK特集番組の「終戦 ~なぜ早く決められなかったのか~」でした。
 東京大空襲沖縄戦、そして広島・長崎への原爆投下などにより、終戦までの六か月間に日本人の犠牲者は急増しました。戦局が悪化の一途を辿る中、帝国日本の指導者たちは折を見て何度か会議の場を設けて、今後の戦争の方針について話し合いをしていました。が、集まったどの指導者も意見をまとめることができず、戦争を続けるか終わらせるかの決定を後伸ばしにしていったのです。戦争を早期に終結できるチャンスを何度も逸する指導者たちを歯がゆく思いました。と同時に、史実の出来事を全て知っている人物が過去に戻れて、戦局を変えられるような立場にいる指導者に働きかけることができるならば、本当に早く戦争を終わらせられるかもしれないとも思いました。
 広島と長崎の人々を原爆から救うだけでも、内容次第で十分、感動を呼ぶものはできると考えました。ただ、原爆投下より早く戦争を終わらせても、二十数万の命は救われたとして未来に何が残るのだろうという疑問が生じました。色々悩み、取材を進める中で見えてきたのはアメリカの存在でした。トルーマンが広島・長崎の原爆投下を正当化したことが、後の世界各国の核兵器開発競争を招いたという事実でした。そう、広島と長崎への原爆投下を阻止することは、原爆により犠牲になった人たちを救うだけでなく、今我々が生きる世界を平和なものにするに違いない、そう考えたのです。

 今作は私と同年代か、それよりもっと若い世代、中学生や高校生の方たちといった幅広い世代に読んで頂きたいという想いがあります。『戦争』という、前線においても、会議の場においても、一つ一つの判断・言動が人々の生死を左右する極限状況に東京の大学生という主人公を置きました。そういった状況の中でも、現代にも通じる、広い視野を持つことや諦めないことの大切さ、人と人との絆について何か感じてもらえたらと思いました。もちろん、史実を取材する中で知った当時の偏った考え方や戦争の悲惨さや虚しさも伝えられたらと思います。
 戦争について、若い人たちだけにではなく、大人の方たちにも新たな発見があるような、そんな物語になっているかと思います。

 ひとまず、これまでの「私の生い立ちとこれまで」から「水の都で起きた悲しいできごと」、「裏切られた淡い思い出」と続いて今記事「80年前の東京に向かった理由」にて、私が今作を書いた背景や大まかな内容、作品への想いは伝えられたかと思っています。今後は現在執筆中の作品についてのトピックや、印象に残った作品の書評、今作の内容を(ネタバレしない程度に)掘り下げた記事も書いていこうと思っております。
ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。

裏切られた淡い想い出

 私が今作を書いた背景の一つとして、三回前の記事『私の生い立ちとこれまで』でも書いたように、正義と自由の国――アメリカに住んでいたという事実があります。物心つく前にアメリカに住んでいた私は、もちろん、この国が日本と戦争をしていたことを知りませんでした。ですが、日本が過去にアメリカと戦争をしていたことも、広島に原爆が落とされたことも、日本に帰ってから少しづつ知るようになります。その中で、楽しい思い出や親切にしてくれたアメリカの人たち、そんな人たちの祖先が、日本にあのような酷いことをしたという事実が、どうしても受け入れられないでいたのです。原爆のことに触れる度に、温かい思い出に裏切られた気持ちになるのです。
 原爆はアメリカの人たちが作ったものでも落としたものでもなく、戦争という憎しみや狂気といった想いが極限にまで達して炸裂したもので、現実に起こったことではなく、私たちはその悪夢を見ていただけではないのか、そう思う時さえありました。
 原爆投下から71年目の2016年5月に広島の平和公園を訪問したアメリカのオバマ大統領の演説を聞いて、原爆投下を悪夢ではなく、事実として受け止めることができ、原爆だけでなくあの戦争を客観的に捉えようとする気持ちが生まれました。

水の都で起きた悲しいできごと

 前々回の記事「生い立ちとこれまで」の続きになりますが、ある出版社から出して頂くことになった今作(以下、『今作』と省略します)を書こうと決意した強い動機になった出来事についてお話したいと思います。私がどんな作品を書いたのか少しでも興味を持って頂ける方にはぜひ知ってほしい内容です。

 広島市被爆都市として小学校の頃から平和教育に力を入れています。広島市民の私は小学校の頃に原爆資料館に親に連れて行かれましたし、学校で原爆を扱った絵本を読んだり、アニメを観たりしました。語り部の方から話を聞いたりもしました。どれも幼い自分にとってショックであり、正直トラウマになったところもあります。社会人一年目も肩書上、広島市の公務員だったので、研修で原爆資料館の見学に行きましたが、その幼い頃のショックというか恐さは色褪せてはいませんでした。
 社会人二年目の時に、大学の頃に知り合った関東の友達M君が広島に遊びに来てくれました。その時に広島のスポットを案内してあげようと思い、その中の一つとして平和公園にも連れて行きました。原爆資料館被爆された方の遺品や被爆直後の惨状をジオラマにした蝋人形を見ながら彼が、「生き地獄だな」と言っていたのが印象に残ってます。もちろん、お好み焼きを食べたり、比治山にある現代美術館に行ったりもしました。宮島にも車で行こうとしましたが、シルバーウィークで混んでいたため途中で引き返しました(^^;
 原爆の惨状を語らずして、原爆というものは語れませんし、語ってはいけないと思います(実際に広島・長崎に落とされたという事実に基づけば)。果たして原爆だけでなくあの戦争すら体験したことのない私が、原爆を題材にした重い作品を書いていいものなのか、と悩んだ時もありました。穏やかな街や人が一瞬にして吹き飛ばされ焼け焦げた、そういったシーンを書こうとしましたが、ネットを中心に取材を進める中で、恐くなり断念してしまいました。
 ただ、そういった原爆の惨状以上にどうしても伝えたいことがあって、パソコンに向かい続けました。

新たに発掘 ハードSFの傑作 

 前回に青春SFとして「時をかける少女」の文庫本を紹介しました。あちらの作品は、どちらかというと、タイムリープといった古典的で馴染みのある現象(漫画『ドラえもん』のタイムマシンがまさにそうです)を上手く使って、中学三年生という幼い女の子が、不思議な体験に遭遇した驚きや未来人に抱いた淡い恋心、といったことに主眼を置いた青春小説でした。科学的な知識がなくても読める、ある意味万人受けする作品だと思います。 
 今回は、科学的用語・造語が登場する近未来の社会派SF作品『ネクサス』(上・下巻)を紹介したいと思います(余談ですが、現在私が執筆している作品もハードSF的要素があるので参考になりました(^^;)。日本語翻訳版として2017年に発刊された割と新しい小説です。サイエンス――特に人工知能とかに興味のある方には打ってつけの作品だと思います。逆にそういった内容に興味の薄い方にはあまりオススメはしませんが、この作品は物語として面白いので、科学的な説明は何となく理解してもらえれば、充分に楽しめると思います。
 著者であるラメズ・ナム氏はマイクロソフトオフィスに13年間勤務したコンピュータ科学技術者というだけあって、プログラミングの専門知識に裏付けされた概念はとても説得力があります(とは言いつつ私も半分くらいしか理解できませんでした…w)。

※ここからはネタバレを含みますのでご注意ください(しかも少し長いです(^^;)↓

 この作品の大きな流れとしては、
 遺伝子工学やクローン技術、ナノテク、人工知能といった科学技術の急速な進歩が世界に脅威を与えているという考えの下にそういった脅威に対抗する動きを取っているアメリカ合衆国国土安全保障省新型リスク対策局(ERD)の特別捜査官のサマンサ・カタラネス(以下、サム))は、近年急速に普及し始めた薬物――ネクサスを回収すべく、神経科学者のケイデン・レイン(以下、ケイド)とその神経科学者仲間たちがネクサスを服用して楽しんでいるパーティ会場に潜入した。
 ここで出てくるネクサスについて私になりの理解を説明すると、
 ネクサスとは服用型のナノマシンのことで、経口摂取すると脳内に広がり、億単位のナノマシンネットワーク(一個一個の極小なナノマシンが網の目のように繋がってできる信号網のこと)を形成する。ナノマシンは生身の脳の140億個の神経細胞と電気的に相互作用して、神経細胞と情報の交換を行うことができる。これによって、思考や感覚の速度を上げるだけでなく、思考の遠隔操作やナノマシンを介しての赤の他人同士との意識の共有といった、まさにSF映画に出てきそうな体験ができる非合法の薬物のこと。
 です。
 ケイドとその仲間はサムに、「ネクサスの合成と使用が違法行為に当たる」として拉致される。ケイドらはERD執行部部長代理のウォレン・ベッカーから、「三年間の保護観察と麻薬検査の義務を課し、監視する。ネクサスを含めたコンピュータ、生物、神経、ナノテク関連技術の使用を禁止する」と告げられる。が、ネクサスの研究を全て引き渡し、ERDで国家に貢献するミッションに手を貸してくれれば、収容を見送るという条件を提示される。その貢献の中身とは、ネクサスといった強制支配技術に主眼を置いた中国の著名な神経科学者ジュウ・スイインが、合成化学者・ナノテク技術者であるタイのテッド・プラト・ナンのような人物を通じて闇市場にどのような知識を流したのか、スパイしてほしいとのことだった。ケイドはその条件を飲み、サムと協力してミッションに挑むことになる。
といった感じです。

 ジュウの足取りを追い接触する中で、タイのマフィアや麻薬流通組織の連中に目をつけられたケイドとサムが命を狙われる、といったようにある時点から事態は深刻化します。その際の戦闘シーンでは、映画『ミッション・インポッシブル』のような近未来の武器を使った人対人のアクションが多く出てきます。テンポがよく迫力があり、闘いが激しくなると若干グロイ描写もありますが(-_-;)、耐性がない私でも何とか大丈夫でした(^^)b
 また、肉体と連動する様々なソフトの中でも、平常心を保つためにセロトニンを増やし、心拍と呼吸を一定に規制し、恐怖信号が扁桃体を通じて広がるのを抑制している『明鏡止水パッケージ』は使ってみたいなと思いました。
 タイの仏僧であり神経科学部長のソムデット・プラ・アナンダがケイドとの会話の中で「地球上のすべての脳と精神が接続された世界を実現することが神経科学の目指す方向」とし、ネクサスと仏教の目標が似ているとしている点も、ユニークに感じられました。  
 ジュウとケイドの心の中のやりとりの駆け引きはスリリングで、人間性の限界を受け入れるか、ネクサスといった科学技術の可能性の力を信じるか、ケイドの葛藤がシリアスに描かれています。

 
 物語はダンスパーティで、主人公の神経科学者であるケイドが、仲間のランガンの作ったソフトウェア<ドン・ファン>がネクサスのインターフェースを利用して発話と聞き取りを制御できるかどうかをテストしているところから始まる。
 ケイドが<ドン・ファン>の指令通りに二十代の女性を口説いたり、VRポルノから得た動運動制御ソフト<ピーター・ノース>によって、その女性と抱き合い求め合うシーンがある。この時に、刺激をあらわすパラメータ画面が「インターフェース警告、最大刺激の秒間発生がパラメータを超過」と、性的刺激をプログラム的に表現しているのが面白い(笑)
 この導入部分だけで、私はこの作品がSFとしても物語としても面白いと確信して、どんどん引き込まれていきました。


 なおこの『ネクサス』(上・下)でこの物語は終わりではなく続編があるらしいです。アメリカでは既に完結しており、できるだけ早い日本語翻訳版を期待します。また、パラマウントが映画化権を取得し制作が進んでいる情報もあり、どちらも楽しみです(^-^)

『ネクサス』(上)

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『ネクサス』(下)↓

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