novelist-kentoの小説活動

仕事のかたわら、主に社会派SFの長編や日常ものの短編小説を書いているアラフォーの男です(^_^) このブログでは、自身の書いた小説だけでなく印象的だった作品のご紹介と、読者様、または実際に執筆をされておられる方が楽しめる・タメになる記事を発信できたらと思っています_(._.)_

裏切られた淡い想い出

 私が今作を書いた背景の一つとして、三回前の記事『私の生い立ちとこれまで』でも書いたように、正義と自由の国――アメリカに住んでいたという事実があります。物心つく前にアメリカに住んでいた私は、もちろん、この国が日本と戦争をしていたことを知りませんでした。ですが、日本が過去にアメリカと戦争をしていたことも、広島に原爆が落とされたことも、日本に帰ってから少しづつ知るようになります。その中で、楽しい思い出や親切にしてくれたアメリカの人たち、そんな人たちの祖先が、日本にあのような酷いことをしたという事実が、どうしても受け入れられないでいたのです。原爆のことに触れる度に、温かい思い出に裏切られた気持ちになるのです。
 原爆はアメリカの人たちが作ったものでも落としたものでもなく、戦争という憎しみや狂気といった想いが極限にまで達して炸裂したもので、現実に起こったことではなく、私たちはその悪夢を見ていただけではないのか、そう思う時さえありました。
 原爆投下から71年目の2016年5月に広島の平和公園を訪問したアメリカのオバマ大統領の演説を聞いて、原爆投下を悪夢ではなく、事実として受け止めることができ、原爆だけでなくあの戦争を客観的に捉えようとする気持ちが生まれました。